実は私は深山と付き合う前までは、常にカメラを持ち歩いて写真を撮っていた。といってもほとんど旅の記録的な写真ばかりで、本格的に風景と向き合っていたわけではない。
旅で知り合った友人に連れられて、はじめて「北写人」を訪れてその写真を見たとき、「へぇ~。これが写真というものなのだ。」と妙に感心したことを覚えている。私が今まで見たことのない、絵のような作品ばかり。それとただの枯れ草だけの風景が、やけに威圧的に私を見下ろしているような感覚。どの作品にも漂う物寂しげな雰囲気。もう十年以上前のことなのに、私はそれらの感覚をとても鮮明に覚えているのだ。 おそらくそれは、まだ昼過ぎなのに、薄暗い石蔵の中でひとりワインを飲んでいた深山治という人が、強烈な印象となって私の中に残ったせいでもあったと思う。 「初めて写真というものを見た」というコメントを残したお客さんもいらしたことがある。写真てとても身近なもののようで、誰もが知っている写真とは別の写真の世界があるのだ。「写真ギャラリー」という看板を掲げていても、興味を示さずに通り過ぎてしまう人がほとんどなのだけど(あれ?看板が見えないせいだけじゃないよね?)、もう少し写真を芸術として一般の人に認めてもらえたらいいのにといつも残念に思う。「だって何枚でもプリントできるんでしょ?」とか、写真の価格を見て「この人って有名な人なの?」なんていわれると心底がっかりしてしまう。絵画の価値も写真の価値も比較しようのないものだと思う。良いものは良いのだし、悪いものは悪いのだ。(もちろん、深山のすべての作品が優れているとは言わない。) とにかく皆さん一度「北写人」にいらして「写真」をまず見て下さい。きっと知らない世界を垣間見ることができるはず。皆さんの心に新鮮な風を吹き込めたら、そして何かを感じ取っていただけたら、私はとても幸せだ。 でも実は、「来てね」という前に、受け入れ態勢をきちんと作っておかねばならない。写真は常に展示してあるのだが、いつも「閉まっている」ので有名な写真館なのだ。それに「何をやっているのかよく分からない」し、「気にはなってるけどなんとなく入りにくい」のだそうだ。 冷やかしの観光客にどっと押し寄せられても困るが、やっぱり多くの人に見ていただいて、作品も買っていただきたいというのが本音。(もちろん見るだけでもOKよ。) 今年から私も少しずつギャラリーの番人の仕事に戻りたいと思っている。これも娘の成長度次第?(去年は、人が来ると「お話しないで~!」と暴れていた娘。今年は「お仕事手伝う!」と言ってくれているが、どうなることやら…。) ちなみにギャラリーは4月中旬以降、遅くともゴールデンウィークには開館予定です。開いているかどうかは運次第。 |
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